19/08/2026
泡のワインといえばもちろんシャンパーニュ。とはいえ、世界にはシャンパーニュ以外の泡もあります。スペインのカバ、イタリアのフランチャコルタ、フランスのクレマンは、シャンパーニュと同じ製法で生産されていますし、アメリカやオーストラリアといった新世界諸国、最近では英国にも、そうした本格派スパークリングがあります。とはいえ、同じ土俵(製法)で戦う限りは、シャンパーニュは無敵艦隊で、他の追随を許しません。他国・地域の泡にも、シャンパーニュと同じぐらい素敵な銘柄はモチロンありますが、団体戦になると層の厚さが圧倒的なのです。
そんなシャンパーニュに、異種格闘技で戦いを挑み、大成功を収めているのがイタリアのプロセッコ(Prosecco)。ヴェネト州、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州というイタリア北東部の広い地域で造られる泡で、グレーラという白ブドウ品種を主に使います。シャンパーニュとは製法がまったく違い、簡単に言うとスピーディなお手軽方式。ブドウを収穫してから瓶詰めまでの期間が短いので、製造コストが安いぶん、ワイン自体も安価です。製造期間の短さは、風味の違いにもつながっていまして、爽やか、フルーティ、微妙に甘いと、なにも考えてなさげなお気軽感がパンパンに詰まっています。要するに、『泡を含むワイン』という点以外、シャンパーニュとは何も共通点のない動物なのです。
シャンパーニュのフランス国外輸出本数は、21世紀に入ってからの四半世紀、多少の凸凹がありつつも、ほとんど変わっていません(2025年統計で、750ml瓶換算約2.7億本)。プロセッコのほうは、同じ期間、超右肩上がりの成長を続けていまして、2025年度の輸出本数が6.7億本と、量では完全にシャンパーニュを凌駕するに至りました。とはいえ、ボトル単価はぜんぜん違います。シャンパーニュ・ルラージュ・プジョーのベーシック・キュヴェであるトラディション NVが、現在11,000円税込。プロセッコは、2,000円税込ぐらいがボリュームゾーンでしょうか。高級テンプラ店の最上級クルマエビと、庶民的な蕎麦屋のエビ天を比べるようなもので、輸出量の単純比較にはあまり意味がありません。
ワイン愛好家の中には、『原理主義者』と呼ぶべき人がときどきいます。『戦後のワインは飲まない』と公言する古酒マニアが、ワタシの友人にもおりまして、そのへんのワインバーなんかに連れては行けず、なかなかの厄介者です。そこまで極端ではないにせよ、『シャンパーニュ以外、泡とは認めない』という人は、決して珍しくないでしょう。しかし、そんなに狭量でなくてもよくないですか、とワタシは正直思います。ときには、厚い衣がつゆを吸った、蕎麦屋のエビ天が食べたい日もあるでしょうよ。プロセッコを飲めば、シャンパーニュだけが魅力的な泡ではないとわかると同時に、シャンパーニュの本質的魅力、気高さがより深く理解できるようになります。それはとてもハッピーな、ワイン生活の改善ではないでしょうか。以上、建設的な浮気のススメでした🥂✨
●話(中の人):都内某超高級ホテルでサービスする若手イケメンソムリエ。シャンパーニュに精通。
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